Story Of ちー子

ちー子はホームレスの仔猫でした。

もう8年ほど前になりますが、ある日この店の主人が路上を歩いていた時のこと。

ちょうど小学生の登校時刻と重なる朝の時間帯でした。

 

小学校の建物近くの路上に、ランドセルを背負った子供たちが集まって何やら一方向をみんなで見つめながらワイワイ。

「何だろう」と思って子供たちの視線を追うと、そこにはちいさいちいさい黒い仔猫が「シャー!」と威嚇の声をあげながら、3羽のカラスに必死に立ち向かっている姿がありました。

『カラスって、仔猫を襲うんだ・・・』

 

そのまま黙って少しだけ見ていると、一羽のカラスが仔猫のしっぽをくわえて引っ張る。あとの2羽が仔猫の耳と目を狙って突つこうとしている。

 

いくら自然の摂理とはいえ、小学生が多く見守る中で仔猫がカラスに襲われて絶命するなんてちょっと見せられない。・・・そんな気持ちで、店主は近くに落ちていた棒切れを拾い上げカラスを追い払うと、泥だらけの仔猫を抱きしめて保護したのです。

ひょっとして親猫が迎えに来たりはしないだろうか・・・とも思ったのですが、このまま野良に戻したら間もなく死んでしまうだろうとすぐに想像がついたのでした。

 

さてと・・・、助けたはいいが、自分は猫なんて飼ったことがない・・・

誰か飼ってくれないだろうかと、その日一日中あちこち探したが見つからず・・・やがて帰宅する時刻に。

「もう決心した!そのまま仔猫を段ボール箱に入れ、家へ連れて帰る!」

・・・奥さんは何と言うだろう

・・・学校帰りに捨て犬を拾って帰り、お母さんを困らせる小学生のような心境で帰宅。

 

奥さんは仔猫を見てびっくり。

猫なんて飼ったことがないのはお互いさま。

でも、この悲惨な姿を見たら保護せざるを得ない。奥さんも嫌な顔一つせず、仔猫を飼ってやることに同意してくれた。

名前は、奥さんが「かわいい名前だから」と「ちー子」に決まる。

あのまま店主が偶然通りかからなければ、カラスたちにつつかれて奴らの「えさ」になっていたかもしれない・・・

小さい体でそのまま野良生活をしていたら、栄養不足でやがて死んでしまったかもしれない。

 

でも、店主との運命のめぐりあわせ。

 

さらにもともと猫を好まない(というか、イヌ派の)奥さんが何故か即決で飼うことに同意・・。

通常あり得ないシチュエーションの連続に、この猫を「幸運な猫」と言わざるを得ないのです。

 

以来、ちー子はかわいがられて飼ってもらうことになった、幸運な飼い猫()となったのです。

 

ちー子は泥だらけでたくさんの毛玉ができ、がりがりに痩せてあばら骨が浮き出ている上、おなかに回虫がいるひどい状態でした。背中にはさっきのカラスにやられたのか、無数のひっかき傷で血がにじんでいました。表情もこれまでの苦労を物語るように目つきが鋭く、狡猾なキツネのようにさえ見えました。

 

 

栄養のある食べ物を食べ、病院へ行き、美容室でお手入れをしてもらうと(下の1枚目から11枚目までが、当時の写真です。)、やがて穏やかでかわいらしい表情に。

そしてなんと、毛を短くするとシャムネコもびっくりの上品な灰色。伸びてくると貫禄の黒とこげ茶。まるで別な猫のような姿に変身するのです。一匹で2度おいしい(?)幸運ねこ。それがちー子なのです。

 

ちー子はほとんど悪さをしません。嫌なことをされても人間に爪を立ててひっかくことはないし、ごはんと水とトイレをきちんとしていれば、飼い主が一週間の旅行に出かけても家の中は片付いたまま。(そのかわり、帰宅したときにはものすごく甘えてきます^^)

たまに壁をがりがりやりたがるけれど、「だめだよ。」と言えばすぐにやめる。

お座りやお手、伏せだって犬並みにできる。最近は「キスミー^^」といえば、飼い主の鼻にちゅ~してくれる。(なぜかほっぺではなく、鼻に^^;)

高い所へ上がることはないけれど、窓から外の景色をじっと見つめるのが大好き。

 

野良のころの怖い思い出でもあるのか、臆病で外へは出たがらない。知らないお客様が家にいらっしゃると、隠れたり寝ていたり。帰られると「誰が来ていたんだ?」と言わんばかりにきょろきょろしながら出てくる。

 

穏やかな生活に心を落ち着け、健康を取り戻し、そして我がもの顔で安心してのんびり暮らす、幸運ネコ「ちー子」の日常をご覧ください。